「生物多様性」私たちにできることは?

2010年は国連が定めた「国際生物多様性年」。

世界の国の人々が協力して、この星の「生物多様性」すなわち、あらゆる生命が息づく自然環境を守るために行動する大きな節目の年になります。2010年10月には愛知県名古屋市で、第10回目となる生物多様性条約※の締約国会議(CBD・COP10)が開催されました。

今回は、生物多様性をテーマに、今地球上で起こっている問題などについてまとめてみました。

※個別の種や特定の生態系に限らず、時間的、空間的な広がりを想定した、地球規模で生物多様性の保全を目指す唯一の国際条約
生きものの「個性」と「つながり」をいいます。
地球上の生きものは、さまざまな環境に適応して進化し、3,000万種ともいわれる多様な生きものが生まれました。

 

生物多様性とは

~3つのレベルの多様性~

◆生態系の多様性
森林、里地里山、河川、湿原、干潟、サンゴ礁などいろいろなタイプの自然があります。

◆種の多様性
動植物から細菌などの微生物にいたるまで、いろいろな生きものがいます。

◆遺伝子の多様性
同じ種でも異なる遺伝子を持つことにより、形や模様、生態などに多様な個性があります。

生物多様性の恩恵

生物多様性のたくさんの恵みによって、私たち人間を含む生きものの「いのち」と「暮らし」が支えられています。

~生態系サービス~

◆すべての生命の存立基盤

酸素の供給  気温・湿度の調節 水や栄養塩の循環  豊かな土壌

◆豊かな文化の根源

地域性豊かな文化 自然と共生してきた知恵と伝統

◆自然に守られる私たちの暮らし

マングローブやサンゴ礁による津波の軽減
山地災害、土壌流出の軽減

森や海の環境は、地球の気温や気候を安定させる大きな役割も果たしています。時には災害の被害を小さくする、防波堤の役割も果たしてくれます。

たとえば、2004年に起きたスマトラ島沖地震の際には、海辺にマングローブの林や健全なサンゴ礁が残っていた地域では、それらの自然が津波のエネルギーを吸収してくれたため、被害が少なくて済みました。
また、人類の医療を支える医薬品の成分には、5万種から7万種もの植物からもたされた物質が貢献しています。

多様な自然環境の中には、まだ発見されていないさまざまな物質が数多く存在していると考えられており、これらが発見されることで、現代の医療が解決できていない難病がいずれ治療できるようになるかもしれません。
しかし、近年の人類による環境の搾取は、生物多様性の持つ自然の回復力、生産力を、25%も上回る規模で資源を消費させ、一気に枯渇させようとしています。

生物多様性に迫る危機

地球上の種の絶滅のスピードは、化石記録からの推定値の1,000倍 (40,000種/年)にも達し、たくさんの生きものたちが危機に瀕しています。

日本の生物多様性の危機

◆第1の危機

開発や乱獲による種の減少・絶滅、 生息・生育地の減少
鑑賞や商業利用のための乱獲・過剰な採取や埋め立てなどの開発によって生息環境を
悪化・破壊するなど、人間活動が自然に与える影響は多大です。

◆第2の危機

里地里山などの手入れ不足による自然の質の低下
二次林や採草地が利用されなくなったことで生態系のバランスが崩れ、里地里山の動植
物が絶滅の危機にさらされています。また、 シカやイノシシなどの分布拡大も地域の生態
系に大きな影響を与えています。

◆第3の危機

外来種などの持ち込みによる生態系のかく乱
外来種が在来種を捕食したり、生息場所を奪ったり、交雑して遺伝的なかく乱をもたらし
たりしています。また、化学物質の中には動植物への毒性をもつものがあり、それらが生
態系に影響を与えています。

さらに、地球温暖化による世界的な危機として、多くの種の絶滅や生態系の崩壊があります。平均気温が1.5~2.5度上がると、氷が溶け出す時期が早まったり、高山帯が縮小されたり、海面温度が上昇したりすることによって、動植物の 20~30%は絶滅のリスクが高まるとい
われています。
たとえばシベリアの東端、ロシアの沿海地方の森には、世界でもっとも北にすむアムールヒョウがいて、その数はわずか30頭あまりで絶滅寸前の危機にあります。森の消失がアムールヒョウを脅かしており、貴重な自然の森の木が、木材として海外に売るため伐られているのです。
この木材は少なからず、ロシアから直接、また中国を経由して日本にも持ち込まれ、利用されています。日本での木材利用が、海の向こうの森とそこに生きるさまざまな動物たちにも影響を及ぼしています。

私たちがもっとよく地球の生物多様性について知り、自分と世界の自然のつながりを考えるなら、人と自然の共生に向けた取り組みは大きく前進します。

まずは普段の生活の中で利用している製品がどこでどのように作られ、手元に届いたのか関心をもち、加工のプロセスで環境を汚染していた場合、その製品を利用するべきかどうかを考えることが必要です。また、林業者や漁業者が環境保全と資源を使い尽くさぬよう配慮して生産した木材やシーフードを消費者として選んで買うことも、生物多様性を保全する手段の一つです。

私たちは次の世代に、地球の生物多様性と、そこから生み出される自然資源を残す使命を担っています。
そのために何が必要なのかを、考えてみませんか。

出典:WWFジャパンHP http://www.wwf.or.jp/biodiversity/
環境省 自然環境局 生物多様性センターHP http://www.biodic.go.jp